綾音先輩がついていてくれた時は、かなり失敗してきたから、話が辰巳さんにもいったんだろうけれど。


「あー、いえ……」

「ん?顔色悪くないか?」

「えっ?辰巳さんまでそんな事言います?」

「何だ。すでに誰かに言われたんだ?」

「綾音先輩にも……」


素直に答えると、辰巳さんはおかしそうに笑いだす。


「もしかして、顔色悪いの自覚ないのに綾音に指摘されて編集部追い出された?」

「顔色悪いって、元からこんな色じゃないですか?私は」

「そんな事ないよ。いつもは健康的でもっと血色いいよ」


いつもは健康的で血色いい。

そう言われてもあまりピンとこないけど。


「……ただ、ここ一か月ほどはあまり良くないかな。ただミスもなく仕事こなすし、健康上は問題ないのかなって思ってたから声はかけなかったけど……」


一か月ほど。

顔色が悪いのは七海が亡くなった後からなんだ。

鏡を見ても自分で全く気が付いてなかったのは、見慣れた顔だからだろうか。