青柳さんは話しながらスマホを取り出して、写真を見せてくれた。

画面に表示されていたのは、小学校の卒業式の後とみられる写真で、七海と白鳥透真君が写っていた。

確かに、卒業アルバムの写真と比べたら明らかに白鳥少年は背が伸びていて、七海より少し背が高い。

気を許せる仲であるせいか、カメラに向かって二人とも柔らかい笑顔でポーズを取っている。

心なしか、白鳥少年の顔色もよく見えている。


「七海とは幼稚園の時からの幼馴染で家が近所だったんだ。親同士も仲が良かったから、一緒にいる事が当たり前で。だから七海とは兄弟みたいな感覚でさ。まあ、俺がこんなんだったから、七海が姉のようにいつも俺をリードしてくれてた。小学校入ってからも関係性は変わらなくてさ。でも、学年が上がってくると男は男、女は女と……みたいな謎の暗黙のルールが出現するんだよな。七海と俺が一緒にいるのはおかしいって、いつも誰かがからかって笑い出す」


思い出しながら、飽きれたような口調でため息をつきながら青柳さんが言った。

言われてみれば、確かにそうだったなって思う。

変にませ始めてきて、男の子と一緒にいるだけで、「付き合ってるの?!」ってよく聞かれた。

仲がいいから、友だちだから、普通に趣味の話で盛り上がっているだけなのにね。


「俺も七海も最初は相手にしなかった。でも、七海は可愛かったから、七海の事が好きな男子が俺の存在を許せなかったんだろうな。何かと嫌がらせをしてくるようになった。俺はチビだったしガリガリだったから、体格のいいそいつには何をやっても勝てなくて。勝てたのは勉強くらいか」


確かに卒業アルバムを見たら、中学生や高校生と間違えるような体格の男子が何人もいるし、白鳥少年が勝てなかったのは頷ける。


「七海には隠してたけど、やっぱり気づいちゃうんだよな。でも七海は何も言わずに登下校はもちろん、学校だって同じクラスだったからずっと俺の傍から離れなくて。女子に何を言われても、断り続けていたせいか、女子も七海から離れちゃって。更に七海は可愛かったから、七海が男子からモテるのが気に入らなかったんだろうな。七海へのいじめも始まっちゃって」


きっかけは白鳥少年への男子の嫌がらせで、七海が彼の事をかばうのを理由にして、女子が便乗していじめに加わった……。

想像をしただけでもかなりひどい地獄絵図で、身震いしてしまった。


「小学校卒業と同時に、父の転勤で引っ越す事が決まったんだ。七海とは別の中学になる。これで七海は俺から解放されるから新しい友だちができるだろうって思ってたけど、俺が思っていた以上に七海は人を信用できなくなってたんだ。俺とは別の中学だけど、七海は小学校が一緒だった奴らがいたから、中学に入っても新しい友だちを作らなかった。高校は自分の事を誰も知る事のないところに行くって決めて、ここから1時間以上かけて通学してたよ」