アルバムの他のページをめくって確認してみると、どのページもやはり同じような写り方だった。

七海の傍に必ず写っているけれど、どの写真も一切笑う事なく無表情。

その無表情さがまた不気味に思えてならなかった。

……これが、青柳さんの小学校の時の姿?


「……いや、でも」

「言うと思った。……身分証明」


いくらでも成りすましできるでしょと言おうとしたら、私の反応を予想していたかのように、青柳さんは私の顔の前に運転免許証を突きつけた。


「いや、近すぎるって……」


彼から免許証を受け取って、改めて確認をする。

名前は白鳥透真で顔写真は青柳燈真くん。


「……偽造じゃないよね?」

「そうだよな、そうなるよなー。じゃあ特別大サービス。これならどう?」


青柳さんはそう言って、持っていたバッグの中からパスポートとマイナンバーカードを取り出した。

いずれも免許証と同じで、写真は青柳燈真くんだけど、名前は白鳥透真となっている。

流石にここまで揃っていたら、偽造だろうと疑うのは失礼にあたるかもしれない。

七海のご両親が「とうま君」と呼んでいたのは、「燈真君」のつもりではなく、「透真君」と呼んでいたのだろう。

おじさんもおばさんも、青柳さんが「とうま君」である事には変わりないし。

私は小さく頷きながら、免許証、マイナンバーカード、パスポートを彼に返した。


「……七海がいじめられていたのは本当。まあ、七海が……というよりは、俺がいじめられていたのを七海がいつもかばってくれたんだけどな」


彼はバッグにさっきの三つを大事にしまうと、私の前に腰を下ろした。


「見ての通り、白鳥透真は今にも消えそうなほど影が薄い存在で、ガリガリでオドオドしていて、人前に立つとすっげー緊張して発表じゃ失敗ばかりの気の小さい少年だったわけよ。柚乃ちゃんが疑うのも無理もないけどね。今と昔じゃ180度違うから」

「人前に立つとすごい緊張するって……青柳燈真君はいつだって堂々としていて、笑顔を絶やさないのに……」

「努力したんだよ。七海に守ってもらってばかりだったから、俺が守る側にならないとって思って。……小学6年生の年明けくらいから、少しずつ身長が伸び始めたんだ。卒業式を迎える頃には七海を少し追い越してたと思う」