サングラスをかけているせいか、彼の表情がいつも以上に冷たく見えて怖く、総毛立つ。

だけど……この先、どうすればいい?

どうすれば、この状況から抜け出せる……?

黙り込んだまま、私は青柳さんを真っ直ぐに見つめ、目をそらさなかった。

すると、青柳さんは部屋のドアをパタンと閉め、私の方へと近づいてくる。


「アルバム……見たんだろ?」


私の抱えるアルバムを指さして、青柳さんが再度問いかけてきた。

どう答えるのが正解なのか、少しの間、黙って考えていたけれど、この場を脱出できそうな答えなんて浮かぶわけがなくて、私は静かに頷いた。


「……あなたは、本当は誰なの?」


どうせ終わるのなら、聞いても聞かなくても同じだ。

恐怖で震えている事を悟られないよう、気丈に振舞い青柳さんに問いかける。

だけど、青柳さんはなぜか私の問いかけに口の端を釣り上げて、フッと笑う。


「誰……って、俺は青柳燈真だけど?」

「そんな事聞いてるんじゃない!七海の……七海の幼馴染を騙って、何がしたいの?何が目的なの……?」


幼馴染を騙る目的なんてひとつしかない……。

七海を自殺に追いやった張本人で、彼女が死ぬ間際に残した痕跡をすべて消そうと近づいてきたのでは……?

でもそうなると、おじさんやおばさんが一緒になって私を騙している事になる。

七海の付き合っていた彼が誰なのかわからないのに、見知らぬ男が七海の幼馴染を騙る協力なんておじさんもおばさんもするだろうか。


「騙ってないよ。俺は七海の幼馴染……」

「小学校の卒業アルバムに青柳燈真はいなかった。青柳さんは七海とは中学から別だったって言ったから、同じ小学校を卒業しているはずだよね?……でも、何度見てもどこのクラスにも青柳燈真はいないの」

「それは……」

「途中で転校してしまった?途中から転校してきた?……前者だと、中学校から別々になったって言ってた発言と矛盾するから却下。後者だと幼馴染という関係が成立しなくなるから却下。じゃあ、あなたは何者なのか……?」

「何者とかそんな、大層な物じゃない。俺は七海の幼馴染であり、それ以上でもそれ以下でもない」

「ふざけないでよ!……私は、これを見て本当に本当に胸が痛かった。あなたが卒業アルバムにいなかった事は衝撃的だったけど、それよりも……七海はずっとひとりぼっちで、端の方で写ってる。……いじめられたっておばさんから聞いた。理由はわからないけれど、多分、燈真君と仲が良かったからだろうって、言ってた。でも、燈真君が事務所に入所したのは中学になってから。小学生の時に一緒にいていじめられたっていうのは、おかしい。……だからいじめられた理由は違うとは思うんだけど……何の目的があるのかわからないけれど、そんな辛かった七海の過去を利用するような事、やめてよ!」