「……柚乃ちゃん。七海の元婚約者を追うんだろ?俺もできる限り協力するから、何かわかったら連絡して欲しい」

「……えっ?」


顔を上げると、青柳さんがスマホの画面を差し出している。

画面に映し出されたQRコード。


「俺の連絡先。柚乃ちゃんのも教えてよ」

「え?あ、でも……」

「俺だって真相知りたいんだ。七海がどうして死ななきゃならなかったのか。……でも、俺は時間がなさすぎて追えない。だから、頼む」


青柳さんが帽子を外して私に頭を下げた。

国民的アイドルの姿ではなく、青柳燈真として真剣な思いで私に頭を下げているんだ……。

私はスマホを取り出し、青柳さんのQRコードを読み取った。

青柳さんの連絡先が登録されたのを見て、私はカバンから名刺ケースを取り出し、青柳さんに名刺を差し出す。


「どこまでたどり着けるかわかりませんが、七海のために突き止めます」


私の言葉に一瞬、彼の表情が歪む。

でも本当に一瞬の事で、青柳さんはすぐに表情を戻して名刺を受け取った。


「……ありがとう。よろしくお願いします」



こうして、アイドル青柳燈真との不思議な関係が始まった。