しばらく、卒業アルバムを開いたまま放心していた。

あまりに突飛な事を考えすぎてしまっただろうか。

……でも、卒業アルバムに存在しないのであれば話してくれればいい事だし、どういう理由かわからないけれど、七海の幼馴染だと名乗る以上、七海の死の真相を追っているのは事実である。

隠しているのは、本物の七海の幼馴染を消して、成りすましているから?

そうなると、青柳さんと馴染んでいるおじさんとおばさんもグルという事になるけれど……?

おじさんもおばさんも青柳さんと一緒になって、私を騙していたとしたら……この状況はかなりまずいのではないか。

……もしかしたら、触れちゃいけない部分を私は知ってしまったとか?

心臓がバクバクと大きく脈を打ち、全身の毛穴から汗が噴き出したかのように、一瞬にして体温が上がる。

えっと……今日のドリプリのスケジュールって、どうなってたっけ?

今日は4月22日。

七海の月命日であるから、青柳さんがこの家を訪れる可能性が非常に高い。

彼は私が今日、七海の家に足を運び、アルバムを確認する事を知っている。

彼と鉢合わせる前に、この家から去った方がいいような気がする。

開いていた卒業アルバムを閉じようとした時だった。

後ろでかすかな気配がして、手が止まる。

部屋のドアはさっき閉めたはずなのに、気配がするという事は、誰かが音もたてずにこの部屋に入ってきたという事。

心臓の音がバクバクとうるさいくらいに聞こえてくる。

私に気付かれないように、音もたてずに入ってくるのはおじさんでもおばさんでもない。


「……アルバム、見た?」


低い声で問いかけられ、心臓が止まるかと思うほど体が硬直する。

国民的アイドルが平日の真昼間にここに来られるとは微塵も思っていなかった。

意を決してゆっくりと振り返ると、部屋の出入り口に寄りかかり、腕を組みながら私を見下ろす青柳燈真の姿がそこにあった。

卒業アルバムを持つ手が震える。

それを悟られないように、ギュッと胸に強く抱えて青柳さんと距離を取るように、後ずさりをする。

逃げ場のない二階じゃ、後ずさりをしたところで何の意味もないかもしれないけれど。