亡くなる数時間前まで、一緒に飲んでいた事、結婚相手との未来を描いていた事、ブーケをくれるという話をした事、それから幼馴染の事……色々な話をして笑い合っていたのにって思い出したら、涙がスーッと流れ落ちた。

あんなに楽しそうに笑って話していたのに、数時間で何があったのだろう。

しかも電話をかけてきた事すら気付かなかった。

七海の助けを求める悲痛な声が頭の中で響く。

……この事は青柳さんには言えない。

おじさんは私のせいじゃないって言ってくれたけれど、彼が知ったら納得しないだろう。

ギュッと祈るように両手を合わせて握りしめた瞬間、車が止まった。


「……ごめん、辛い事を思い出させて」

「……えっ?」


顔を上げると、目の前にタオルが差し出された。

首を横に振ってタオルを受け取り、それで涙をふく。


「すみません……」

「……柚乃ちゃんはどうして、葬儀にも出て、月命日に七海の家に行ったの?親友っていう理由だけで、何で?」

「大学に進学するために東京に出てきたから、ここで初めてできた友だちが七海だった。私は親友と呼べるくらい仲がいいと思っていたけれど、七海にとっては違ったのかもしれない。でも、一緒にいる事が多かったし、職種も趣味も一緒で、本当に楽しい時間を過ごしてこられた。けれど、彼女が苦しんでいた事を聞きだせなかったし、助ける事もできなかった……」