「どうして……?青柳さん、七海と中学から別だって言ってたよね……?」


この前の電話で、青柳さんは確かにそう言っていたし、彼が事務所に入所したのが中学1年生の時だから、間違ってはいない。

小学校卒業前に引っ越したとか?

……いや、それなら、中学から別だったとか言わないで、小学校を卒業する前に引っ越したとか言うはず。

じゃあ……何で、いないの?


「ちょっと……待って?」


ふと、さっきおばさんとしていた会話を思い出す。

七海がいじめられた原因は、おそらく燈真君の事だったんじゃないかっておばさんは言っていた。

燈真君と仲が良かった事で、嫌がらせをされたって……。

私はその時、てっきり国民的アイドルの幼馴染で、妬まれたから嫌がらせをされたのかと思っていた。

でも、七海がいじめられていたのは小学生の時。

青柳燈真君が事務所に入所したのは中学生の時だから、まだ国民的アイドルにはなっていなかった。

じゃあ……七海がいじめられたのは、燈真君が入所前からアイドル並の容姿をしていて、人気者だったから?

そう思うけれど、そこそこ可愛いなって思う男子はチラホラいるものの、そこに青柳燈真の名前はないのだ。


『地元一緒だけど、中学からこの世界入ってたから、中学は別だし……ちょっとわかんないな』

『……急に地元の事振られたから、あんまり記憶ないなーって思っただけで……特に意味はないんだけど』


この前の電話で地元の話をした時の青柳さんの反応が明らかにおかしかったのを思い出した。

そして、七海の実家に行ってアルバムを見せてもらうしかないのかなと言った私に対し、青柳さんの反応は遅かった。

昔の写真を見られたくなかったのかなと解釈したのだけれど、そうではなかったようだ。

七海と同じ小学校に通っていたはずなのに、なぜか卒業アルバムに存在していない青柳燈真。

覚えていないなじゃなくて、知らなかったんじゃ……?

そうなると、何かの目的で七海の幼馴染という存在に成りすましているという事になる。

『七海の幼馴染』というのは、青柳さんが名乗った時にそう言っただけで、七海からは聞いていない。

でも、私はそれを普通に信じてしまった。

だって、七海には確かに幼馴染がいたし、おじさんもおばさんも、青柳さんの事を受け入れていたから。

いつも話していた、優良物件の幼馴染が本当は誰なのかは、七海にはもう聞く事ができない。

じゃあ……七海の幼馴染と名乗るあなたは、一体、何者なの……?