卒業アルバムを開くと、七海はすぐに見つかった。

七海以外の子は個人写真でみんな笑っているけれど、七海だけは控えめに微笑むだけだった。

それでもクラスの中では群を抜いて可愛くて、改めて七海の可愛さを知った。

同じページに写っているクラスの集合写真では、みんながカメラに向かって満面の笑顔でポーズを取っているのに、七海は端の方で立っていた。


「七海……」


思わずつぶやいてしまったのは、端に写っている七海の傍に誰もいなかったから。

さっきおばさんが言っていた、七海がいじめられていたというのは本当だったみたいだ。

その証拠にどのページをめくっても、七海は他の子とは違って笑顔は全くなく、端の方でひとりで写っている事が多い。

当時の担任の先生は、七海のこの状態を気付いていなかったのだろうか。

気付けなかったとしても、卒業アルバムを作る際、写真を見れば明らかに七海だけ表情がおかしいって気付くはずなのに。

卒業アルバムには、何度も開かれたような跡がどこにもない。

開きすぎて真ん中が白い線になってくるはずなのに、このアルバムにはそれがない。

……もしかして、もらってから一度も開いてない?

この状態じゃ、開きたくなくなる気持ちもわかるけれど。

ため息まじりで、文集のページを開く。

七海は将来の夢について、作文を書いていた。


「雑誌を作る人になりたい……か。七海、夢を叶えたんだね」


読んでいて、アルバムを持つ手が震えてくる。

小学生にしてはとても綺麗すぎる字で、しっかりと自分の夢について書き上げていた。

読んでいて、強い意志が伝わってくる……そんな文章だった。


「……あ、そうだ。青柳さんは?」


七海の文章に浸っていた後、ふと青柳さんの存在を思い出した。

文集のページからまた写真のページに戻り、1組から順番に個人写真を見ながら青柳さんを探す。

七海の卒業した小学校は全部で4組まであり、七海は3組に所属していた。

指で写真をたどりながら、青柳さんの名前を一クラスずつ探していく。


「……あれ?見落とした」


4組まで見たのに、青柳燈真は見つからなかった。

見落としたのかと思って、もう一度、今度は4組から探していく。

同じようにひとりひとり名前を指で確認しながら1組まで遡るけれど、青柳燈真の名前はなかった。