二階にある七海の部屋に入ると、部屋の中は私が遊びに来ていた頃とあまり変わらず、整理整頓されていてとても綺麗だった。

パタンとドアを閉めて、改めて部屋の中グルッと見回す。

推し活コーナーとして、部屋の一角にドリプリ関連の物が飾られている。

特に推しである藤代君のアクリルスタンドだったりミニサイズのぬいぐるみだったり。

ペンライトやうちわなどのライブグッズや、彼のメンバーカラーである黄色をモチーフにした小物が綺麗にレイアウトされて置かれていた。

毎回見るたびに、グッズが増えているにも関わらず、ちゃんとこだわったレイアウトがされているから、やっぱりセンスが違うなといつも感心していた。

七海が女性誌に配属された理由がよくわかるような気がする。


「……推し活コーナーじゃなくて、アルバムアルバム」


いつものくせで、ついつい推し活コーナーに見入っていた私は、呟きながら本棚に歩み寄り、一番下の段を見るためにしゃがみこんだ。

卒業アルバムが幼稚園から順番に並んでいて、背表紙も綺麗なままだ。

私なんて、卒業アルバムを本棚に入れた事はなく、自分の部屋のクローゼットか、階段下の納戸にある段ボール箱の中に入ってると思う。

……思うと言っている時点で、卒業アルバムの行方が定かではないという事。

ガラス戸を開けて、本棚から小学校の卒業アルバムを取り出す。

卒業アルバムを作った会社が違うせいもあるのだろうけれど、質が違うのか、私の卒業アルバムとは違って、かなり綺麗だった。

アルバムの外側のケースは何度も出し入れしたせいで、私のはボロボロなんだけどな。

七海はよほど丁寧に扱っていたのか、本当に綺麗なままだった。

傷をつけないようにゆっくりそっとケースからアルバムを取り出して開いてみる。

……そういえば、ここに泊まりに来た時も一度もアルバムを見せて欲しいって言わなかったし、地元の友だちの話にもならなかった。

部屋を見回しても、置いてある写真たての中に入っているのはドリプリの公式の写真や藤代君だし、コルクボードにはコンビニでもらったドリプリが写ってるお菓子のチラシとか、メモ書きくらいで、七海が写っている写真はひとつも飾られていなかった。

私は実家や今住んでる自分の部屋に仲の良い友だちと撮った写真を飾っているから、不思議に思ってしまうけれど、世の中には写真を飾るのが嫌だという人もいる。

七海と一緒に撮った写真もあるから、七海が写真嫌いだったというわけではないはずなんだけど……私と一緒に撮った写真もないのは少しだけ寂しかった。