『えっ?あ、いや……地元一緒だけど、中学からこの世界入ってたから、中学は別だし……ちょっとわかんないな』

「なんか……今、変でしたけど……?」

『えっ?そう?……急に地元の事振られたから、あんまり記憶ないなーって思っただけで……特に意味はないんだけど』


そうかなー?

明らかに答え方がぎこちなかった気がするけど。

ただ、青柳さんの言う通り、彼は中学に入ってから事務所に入所しているので、言っている事は間違っていない。

有力な情報提供者だと思ったんだけどな。

七海は大学へ通うのに実家から一時間半の距離でひとり暮らしをしていた事だし、地元の友だちとも疎遠になっていたのかな。

それなら、青柳さんが知らないのも無理はないかもしれない。

私は地元に帰るたびによく集まってたから、疎遠になる事が不思議でならないけれど。

……都会と田舎の違い?


「うーん、じゃあ、やっぱり、七海の実家に行ってアルバムとか見せてもらうしかないのかな」

『えっ?……ああ、まあ……その方が確実かもな。曖昧な情報よりも』


……今の反応は何?

私、何かおかしい事言った?

……あー、もしかして、青柳さん、昔の写真を見られたくないのかな。

だから歯切れの悪い言い方したのかな?

それなら納得なんだけど。

私はうんうんと頷きながら、手帳を開く。

四十九日には行けなかったけれど、月命日は有休を申請したので、その時に確認しよう。

とりあえず、事前におじさんに連絡する事にして……。


「……この仮説が有力なら、知り合いを紹介するほどその友だちと仲良かったって事だよね?」

『そうかもしれないけど、仮説が当たってたら、その友だちはクズだけどな』

「あ、そっか……」


知り合いを紹介して七海と付き合っているのを知りながら、彼を奪うような行為をしたという事になる。

想像しただけでも怒りで体が震えてくるほどだ。

青柳さんの声のトーンも低くなったから、私と同じで見えない相手に対して怒りがわいているのかもしれない。


「……まあ、当たってない事を祈るばかりですけど」


そう言って、私は開いていた手帳を閉じる。

でも、そう願っても、七海が傷ついて自ら命を絶っている事実は変わらない。

だから、真実を追う事で私も青柳さんも傷つき、怒り、涙を流す事になる事は間違いない。