でも、これには理由がある。

私は四人きょうだいの上から二番目。

二つ上のお兄ちゃんは地元の大学に進んだから、家から通ってる。

弟は高校一年生で、妹が中学二年生。

両親あわせて、六人家族でいつもにぎやかだった。

おじいちゃんとおばあちゃんも近くに住んでるから、頻繁に行き来していたし、近所の人とも仲良くて。

誰かしらに声をかけられたり、声をかけたり、常に会話が絶えなかった。

でも、今は私はひとりぼっち。

自分でこの大学に進みたいと決めたのだから、乗り越えなくちゃいけないんだけど……やっぱり寂しい。

それに、やっぱり環境が違う。

私が育ったところは、割とのんびりマイペースな人が多かった。

でも、東京はそうじゃなくて、どの人も忙しそうに動いていて、理由もないのにつられて私も急いでしまうというか。

早くも『東京マジック』に陥っているような気がする。


「じゃあ、私と一緒に大学生活楽しんでくれる?そうすればホームシックも忘れられるよ、きっと!」


七海の言葉に嬉しくなった私は、大きく頷いた。


「ぜひ、よろしくお願いします!」

「柚乃、力入りすぎだって。じゃあ、連絡先交換しよー」


そう言って七海はスマホを取り出した。

私もスマホを取り出して、QRコードで連絡先を交換する。

電話番号とメールアドレスの交換もした。


「上京して、初めての友だち」

「大学に入って、初めての友だち」


お互いにそう言って笑い合った。




それから、私と七海は大学時代を共に過ごした。

彼女に誘われて、ドリプリのライブを見に行ったり、映画を見に行ったり。

時には、新発売のお菓子を買って、熱く語りあう事もあった。

七海はふんわりとしたオーラをまとった可愛い子で、性格も優しくおっとりとしている。

よくお互いの家に泊まり合って、その時は必ずと言っていいほど、お土産を持ってきてくれて。

料理も上手で、細かいところまでよく気が付く、本当にいい子だった。

夏休みになると、七海の家に泊まりに行ったり、私の実家まで泊まりに来たり……。

昔から知っているような気がするほど、七海とは気が合って楽しい大学生活を送る事ができた。

入学して三日でホームシックになっていた事が嘘のように思えてくるほど。

七海と私は同じ職種を希望としていて、幸運にもお互いの第一希望の出版社から内定をもらう事ができた。