ここで青柳さんが嘘をつくメリットなんてどこにもない。

だって、私と連絡先を交換してまで真実を知りたいと言うのだから。

七海にとって藤代奏多君は推しであり、リアルな恋人ではなかった。


『確かに、柚乃ちゃんに言われて気付いたよ。俺はこっち側の人間だからそんな仮説を思いつきもしなかった』

「あの……ついでなんで、他の仮説も聞いてもらってもいいですか?」

『いいよ』


青柳さんの答えを聞いて、まずは私が即否定した、七海が既婚者と付き合っていた説。

私は否定したけれどって前置きをしてから話し始めたけれど、電話の向こうで青柳さんが大爆笑した。


『柚乃ちゃんの即否定、大正解。確かに、七海は結婚の口約束をプロポーズと言わないし、脳内お花畑になるような夢見がちな乙女じゃない』

「ですよね!……良かった」


さすが、幼馴染。

完全に仮説を否定してくれたから、既婚者説は追わなくていいと思う。


「じゃあ、やっぱり仮説二つ目が濃厚なんでしょうかね……」

『まだ聞いてないけど、柚乃ちゃんがそう思うのならそうなんだろうな。……んで、その仮説二つ目とは?』


私の言葉を否定しない青柳さん。

少し緊張気味に仮説二つ目の、彼氏を知る共通の友だちの話をした。


「大学の知り合いではないと思うんですよ。私、七海と一緒にいた時間多かったんで、知らないっていう事はないと思うんですよね」

『もうそれ、カレカノじゃん』

「……言われてみれば、確かに」


青柳さんにツッコまれ、私は納得したように頷いてしまった。

でも、本当に一緒にいてすごく楽しかったから。

カレカノ……っていうより、もう家族だったよね。


「……そういえば、青柳さんは七海の幼馴染というくらいだから、地元が一緒ですよね?七海の交友関係知りません?仲が良かった人とか、今でも連絡とってるよっていう人とか……」


七海の実家に行かなくても、ここに有力な情報提供者がいた事を忘れていた。