「七海は柚乃ちゃんに話してると思ったよ。柚乃ちゃんの推しが燈真君だって七海が嬉しそうに話してたから」

「あっ、ちょ、ちょっと……」


おじさんは悪気はなかったんだろうけれど、さすがに本人を目の前にして言わないで欲しかった。

慌てて止めたけれど、今の言葉は本人の耳に届いてしまったようだった。


「それは光栄です。七海の親友に推してもらえるとは」


閉じていた目を開けて、ゆっくりと青柳さんがこちらを振り返る。

画面越し、ライブのステージ上のアイドルとしての彼氏か見た事がなかったけれど、まさか日常生活において、彼と言葉を交わす日が来るなんて夢にも思っていなかった。

……七海は私が青柳さん推しだって知ってたから、自分の幼馴染だと話さなかったのかもしれない。

それについては、知らなくて良かったと思う。

もしかしたら、今まで話した事で嫌な思いをしてきたのかもしれないし。