結局、そこなんだ。

その男が見つかれば、少しは七海に何があったのかわかる気がするのに。

ずっと裏切られていた……って、七海は最期の電話でそう言っていた。

裏切ったのは、その男に違いない。

あんなに楽しそうに未来予想図を描いていた彼女を裏切っていたのなら、絶対に許せない。



3月22日。

手掛かりが何も掴めないまま、初めての月命日を迎えてしまった。

七海の遺影を前にすると、未だにいなくなった事が信じられないでいる。

同時に沸き上がってきた姿の見えない元婚約者への憎しみ。

複雑な想いを胸に抱えながら、私は仏壇に手を合わせた。

仕事終わりに寄った七海の実家。

49日を迎えていないので、七海はまだ家にいる。

どんなに忙しくても、月命日は必ず七海に会いに来ようって決めた。


「柚乃ちゃん、ありがとうね」

「いえ、私の方こそ、遅い時間に申し訳ありません」

「こっちの事は気にしなくていいから。……七海が亡くなった事を知っている友だちは柚乃ちゃんだけだから、来てくれるのは本当に私たちも嬉しいんだ」

「柚乃ちゃんもお仕事忙しいんじゃない?七海と同じ職種でしょう?」

「あ、はい。……七海みたいに臨機応変に動けなくて、未だにパニックになってて周りに助けてもらってます」