「仕事関係と思われる書類は田辺さんに渡してきたから、あまり荷物は無かったよ」

「そうですか……。七海、ひとり暮らしの部屋もそうでしたけど、綺麗好きで物をあまり置かないタイプなんですね」

「中学生までは、片付けなさいっていうのが私の口癖だったんだけどね。高校生になってから整理整頓が七海の口癖になっちゃって、しょっちゅう自分の部屋の掃除をしていたわね」


おばさんが懐かしそうに目を細めて話す。

綺麗好きの七海が、片付けなさいっておばさんに怒られてたんだ……。

全然想像つかない。

少しでも汚れを見つければ、いつだって掃除していた七海の姿しか思い浮かばないから。

何度か実家に泊まりに来た時も、七海の部屋は本当に綺麗だった。

私の実家の部屋とは大違い……。


「……それにしても、七海は一体誰とお付き合いしていたのかしら。プロポーズまでしたのだから、七海がこんな事になっているのは知っているはずよね……?」

「本当にそんな男がいたのか?七海の部屋には一切、男が入った形跡はなかったぞ」


おばさんもおじさんも困ったような悲しいような、複雑な表情を浮かべている。