「ごめんなさい、私……っ」

「……謝るくらいなら最初から話してよ。何をそんなに一人で抱え込んでるのよ……」


ほら、と綾音先輩はポケットティッシュを差し出してくる。

それを受け取って、私は涙をぬぐった。


「すみません……すみません」

「謝罪はいいって。悪い事をしたわけじゃないんだし。……それより、私が泣かせたみたいじゃん」

「あ、すみません!」


きょろきょろと周りを見回しながら慌てて涙を引っ込めると、綾音先輩は苦笑した。

私は一度、深呼吸をして姿勢を正すために座りなおした。


「……ちゃんと、隠しておくつもりでしたが、ダダ洩れでしたか?」

「隠したかったの?柚乃には無理無理。無理なんだから、話してみなよ。力になれるかどうかはわからないけれど、解決策を一緒に考える事くらいはできるから」

「綾音先輩……」


何で七海と同じ事を言うのだろう。

止めたはずの涙が、またじわじわと浮かんで零れそうになった。


「……大学時代の親友が亡くなりました」


少しずつポツリポツリと話し始めた。

大学で出会って意気投合して親友となった事、卒業してからも出版社は違えど同じ職種で励まし合っていた事。

プロポーズをされたと報告を受けた数時間後に自ら死を選んでしまった事……。

そして……。

青柳さんにだけは話せなかった、七海からの最期の着信で留守電に悲痛なメッセージが入っていた事を綾音先輩には打ち明けた。

綾音先輩はなんて思うだろう。

休みの日で気が緩みすぎた結果、大事な親友を亡くす事になったって……軽蔑するだろうか。


「……何でそんな事、黙ってたの?馬鹿ね、本当に!」


そう言った綾音先輩の声は震えていた。


「一人で抱えるには大きすぎるし、重すぎる。……辛かったね。もっと早くに声をかければ良かった。本当にごめんね」

「先輩、私……」

「柚乃のせいじゃない。自分を責めてたら親友はもっと悲しむ」


綾音先輩は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。