隠し事ができない……。

七海にも過去に同じ事を言われた事がある。


「柚乃って、感情が顔に出ちゃうほど正直だよね。困っていても嫌な事があっても、自分で何とかしようと頑張って隠そうとしちゃうのも出てる」

「え、私ってそんなにわかりやすい?」

「わかりやすいよ。周りに迷惑をかけないようにって隠そうとするから、声をかけてもいいのかなって迷うよ。柚乃から話してくれるのを待つって決めても、絶対に話してこないから結局私から聞いちゃうんだけどね」

「そっか、ごめん、七海」

「もっと周りを頼っていいんだよ。話す事で一緒に解決の道を探せる事だってあるんだから。話してくれないと、私って頼りないのかなって思っちゃうし」

「違うよ。……なんか、七海に頼りすぎてるのも嫌だなって自分で思ってて」

「頼りすぎだなんて思わなくていいよ。私は頼られて嬉しいから。……それに、柚乃はいつだって自分の意見を持ってるよ。答えだけを求めるような人じゃないから大丈夫。何も気にしないでいつだって何でも話してよ」


そう言って七海はドンと自分の胸をたたいて笑った。

相談したら、「そんな物は自分で考えろ」と突き返されてる人をたくさん見てきた。

自分で考えても壁にぶち当たって、行き詰ったから相談してるのにってはたから見ていて思う事はたくさんある。

人に求めても無駄なら、最初から悩んで悩んで悩みぬいて最善の答えを探し出すしかないという結論に至った。

人に頼るのを諦めてしまっていたのかもしれない。

社会に出る前にすべて。

そんな時に七海と出会って、そんな事を言われたもんだから、かなりの衝撃だった。

世の中にはちゃんと受け止めてくれる人がいる。

受け止めてくれるだけでなく、更に一緒に悩んでくれて乗り越えてくれる心強い存在だった。

依存をしていたわけではない。

壁にぶち当たって途方に暮れて、悩み苦しんで答えが出ない日があったとしても、七海がそばにいてくれればそれだけで心が軽くなったのだ。

これからも、それが続いていくのが当たり前だって思っていたから、まさか七海がいなくなるいう未来なんか想像していなかった。


「柚乃……?」


気付けば目の前の綾音先輩はひどく心配そうな表情で。

私の両目からは温かいものが次から次へと流れ落ちていた。