「本当に急で申し訳ございません。後日、職場の方に荷物を取りに伺いますので」

「いえ……こちらこそ、何と言葉をかけていいのか……。本当に残念でなりません。力になれる事がありましたらいつでもご連絡ください。……黒澤さんも」


田辺さんはそう言って、私に名刺を差し出した。

七海が自分で命を絶ったという事は伏せてあるため、田辺さんも七海が自殺したという事は知らず、病死したと思っている。

名刺を受け取り、私も頭を下げる。


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

「本日はお忙しい中、本当にありがとうございました」


七海の両親が揃って頭を下げると、田辺さんは深々とお辞儀をして会場を後にする。

遠ざかる田辺さんの後ろ姿を見ながら、私は深いため息をついた。


「柚乃ちゃん、大丈夫?本当にごめんなさいね。七海のために……」

「そんな……私こそ、無理言って同席させていただいてありがとうございます。おばさんは大丈夫ですか?後は私がやるので休んでて下さい」

「ううん。柚乃ちゃんこそ休んでていいのよ?」


優しい事ばかり言うおばさんに私は首を横に振った。