どんなに辛い事があっても、時間は止まってくれない。
私の世界は悲しみに暮れているけれど、周りはそうではなく、いつも通りせわしなく動き続けている。
カタカタとキーボードを打つ音、鳴り響く電話の音、誰かが電話で話す声……。
七海を失っても、私の日常は変わらず訪れる。
「柚乃、この間の企画、先方に許可取った?」
ぼんやりとする暇もなく、手帳を見てスケジュールの確認をしていたら、綾音先輩に声をかけられた。
「先ほど返事がきました。こちらの予定通り、明日の14時にうちの会議室で打ち合わせとなってるので、会議室押さえました」
「ありがとう。……柚乃、顔色悪いけど、大丈夫?」
「……はい?」
綾音先輩に指摘されて、私は首を傾げた。
顔色が悪いのは別に今に始まった事じゃないとは思うけど……。
「だから、顔色が悪いって言ってる。……約束取り付けてくれてありがとう。あとは私が動くから、柚乃は少し休んでな」
「……え、いや、でも……」
「ラウンジ行ってて。後で私も行くから」
綾音先輩が私の肩をポンポンとたたいた。
立ち上がるのを躊躇したけれど、綾音先輩はそのままパソコンの画面に向き直ったので、私は渋々立ち上がった。
手帳を閉じてそれを手にしたまま、編集部を出てラウンジへ向かう。
指摘されるほど、顔色が悪い事は自覚していなくて、首を傾げながら歩く。
「黒澤。さっきから首を傾げてどうした?寝違えたか?」
「あ、お疲れ様です、辰巳さん」
後ろから不意に声をかけられて振り返ると、そこに辰巳さんがいた。
グレーのスーツに身を包んだ辰巳直也さんは、私の教育係の綾音先輩の同期であり、ファッション誌の副編集長に今年就任した方。
仕事ができ上司からも後輩からも信頼され、容姿も男性モデルのように背が高くて細身で、純粋にイケメン。
普段、イケメンを見慣れているはずの雑誌編集者でも思わず息をのんでしまうくらいの人なので、言うまでもなく、女子社員から絶大な人気を誇っている。
芸能界でなくても、リアルにこんなイケメンって存在するんだって初めて見た時に私も驚いた。
綾音先輩と一緒にいる時によく声をかけられたせいか、ひとり立ちした今でも私の事を気にかけてくれている。
私の世界は悲しみに暮れているけれど、周りはそうではなく、いつも通りせわしなく動き続けている。
カタカタとキーボードを打つ音、鳴り響く電話の音、誰かが電話で話す声……。
七海を失っても、私の日常は変わらず訪れる。
「柚乃、この間の企画、先方に許可取った?」
ぼんやりとする暇もなく、手帳を見てスケジュールの確認をしていたら、綾音先輩に声をかけられた。
「先ほど返事がきました。こちらの予定通り、明日の14時にうちの会議室で打ち合わせとなってるので、会議室押さえました」
「ありがとう。……柚乃、顔色悪いけど、大丈夫?」
「……はい?」
綾音先輩に指摘されて、私は首を傾げた。
顔色が悪いのは別に今に始まった事じゃないとは思うけど……。
「だから、顔色が悪いって言ってる。……約束取り付けてくれてありがとう。あとは私が動くから、柚乃は少し休んでな」
「……え、いや、でも……」
「ラウンジ行ってて。後で私も行くから」
綾音先輩が私の肩をポンポンとたたいた。
立ち上がるのを躊躇したけれど、綾音先輩はそのままパソコンの画面に向き直ったので、私は渋々立ち上がった。
手帳を閉じてそれを手にしたまま、編集部を出てラウンジへ向かう。
指摘されるほど、顔色が悪い事は自覚していなくて、首を傾げながら歩く。
「黒澤。さっきから首を傾げてどうした?寝違えたか?」
「あ、お疲れ様です、辰巳さん」
後ろから不意に声をかけられて振り返ると、そこに辰巳さんがいた。
グレーのスーツに身を包んだ辰巳直也さんは、私の教育係の綾音先輩の同期であり、ファッション誌の副編集長に今年就任した方。
仕事ができ上司からも後輩からも信頼され、容姿も男性モデルのように背が高くて細身で、純粋にイケメン。
普段、イケメンを見慣れているはずの雑誌編集者でも思わず息をのんでしまうくらいの人なので、言うまでもなく、女子社員から絶大な人気を誇っている。
芸能界でなくても、リアルにこんなイケメンって存在するんだって初めて見た時に私も驚いた。
綾音先輩と一緒にいる時によく声をかけられたせいか、ひとり立ちした今でも私の事を気にかけてくれている。