悪いのは……七海を裏切った奴……。


「絶対に柚乃ちゃんのせいじゃないから。お願いだから、自分を責めないでくれ……」

「だけど……」

「親である私たちは七海の苦しみに気付いてやれなかった。だから、柚乃ちゃんのせいじゃないんだ、絶対に」


そうは言っても、七海だっておじさんやおばさんの事が本当に大好きで、色々なエピソードを笑顔で話してくれた。

だから、そんな二人に心配かけないように、苦しくても辛くても気付かれないようにしていただろう。

……一体、七海に何が起きたというのだろう。


「……おじさん。私に調べさせてください」

「柚乃ちゃん……」

「七海は私に一度も弱音を吐いた事がないんです。心配かけたくなかったのか、頼りなかったから相談できなかったからなのか、ただ単に見せたくなかっただけなのか、それはわかりませんが。……だから、私にかけてきた電話が初めての弱音だったんです。間に合わなかったけれど、せめてそれが何だったのか、答えを見つけたいです」


これはただ単に、七海を助けられなかったという罪の意識を少しでも軽くしたいだけの行為に思われるかもしれない。

答えが見つかった時、私のせいじゃなかったって安心したいだけなのかもしれない。

どう思われても、今の私にできる事はそれだけだ。

顔を上げると、おじさんが力強く頷いた。


「……何でも協力する。私たちが知らなかった、七海の世界がわかったら、教えて欲しい」

「わかりました……。絶対に突き止めてみせます」


どこまでできるかはわからない。

自己満足だと思われてもいい。

私は、七海の苦しみを受け止め、解放してあげたい。

ふと見ると、パソコンの置いてあるデスクに写真たてが飾られていた。

笑顔の七海と……その隣で笑う私。

この笑顔を守る事ができなかった。

救う事ができなかった……。




七海の割れたスマホを握りしめて、私はギリッと奥歯を嚙み締めた。