今日のところはひとまず、家に帰ろう。
そして明日の朝一で、柚乃ちゃんの勤めていた出版社に電話しよう。
流石に出勤はしているはずだから、捕まえられるはず。
柚乃ちゃんと話せたら、今までの事を謝って、全部打ち明けて……。
今度は嘘じゃなくて、本当の事を伝えよう。
あまりよく眠れなかった。
今日は午前中はオフで、午後から雑誌の撮影が控えている。
寝不足は肌の敵なんだけどなと思いながらも鏡を見ながらため息をつく。
寝る事は嫌いじゃないけれど、こんなに眠れずに朝を待ちわびたのは初めての事かもしれない。
昨日の事は何かの間違いだったとか、夢だったんじゃないかとかいう小さな希望を持って、柚乃ちゃんに電話をかけてみたけれど、無残にも打ち砕かれた。
何度も聞いた、使われていないアナウンスは、今の俺にとって死刑宣告にも等しい。
ネットで柚乃ちゃんの勤め先の月の光出版社を検索して、電話番号を探す。
今の時間は9時半。
すでに勤務は開始しているだろう。
すがる思いで月の光出版社に電話をかけた。
「あの、もしもし。そちらの部署に黒澤柚乃さんが所属していると思うのですが……」
『どちら様でしょうか?』
確かに、名乗らなければ繋いではもらえないが、俺の名前を出すわけにもいかない。
迷った挙句、申し訳ないと思いながら七海の苗字を借りる事にした。
「あ……黒澤さんの友人で桐山と申します。彼女のスマホに何度連絡しても繋がらなくて。家に行っても反応がないので、心配で……」
『申し訳ございません。黒澤は一身上の都合で昨日、退職しました』
一身上の都合で退職……?
予想もしていなかった返答に、俺は言葉を詰まらせる。
挨拶もそこそこに、電話を切って俺は膝から崩れ落ちた。
「柚乃ちゃん……もう二度と会えないのか?」
復讐なんて間違っていた。
そんな事をしても、七海は戻ってこないし、誰も幸せになんかなれない。
柚乃ちゃんへの愛情は確かに最初は全部嘘だった。
でも、向き合ううちに俺の方が柚乃ちゃんの事を、誰にも渡したくないくらいに好きになってしまっていた。
幼馴染を救えなかっただけじゃなく、その幼馴染のために心を痛めていた大事な人まで俺は追い込んで更に傷つけて、失くした……。
幸せはすぐそばにあったのに、何の予告もなく、崩れるようにして終わりを迎えた。
そして明日の朝一で、柚乃ちゃんの勤めていた出版社に電話しよう。
流石に出勤はしているはずだから、捕まえられるはず。
柚乃ちゃんと話せたら、今までの事を謝って、全部打ち明けて……。
今度は嘘じゃなくて、本当の事を伝えよう。
あまりよく眠れなかった。
今日は午前中はオフで、午後から雑誌の撮影が控えている。
寝不足は肌の敵なんだけどなと思いながらも鏡を見ながらため息をつく。
寝る事は嫌いじゃないけれど、こんなに眠れずに朝を待ちわびたのは初めての事かもしれない。
昨日の事は何かの間違いだったとか、夢だったんじゃないかとかいう小さな希望を持って、柚乃ちゃんに電話をかけてみたけれど、無残にも打ち砕かれた。
何度も聞いた、使われていないアナウンスは、今の俺にとって死刑宣告にも等しい。
ネットで柚乃ちゃんの勤め先の月の光出版社を検索して、電話番号を探す。
今の時間は9時半。
すでに勤務は開始しているだろう。
すがる思いで月の光出版社に電話をかけた。
「あの、もしもし。そちらの部署に黒澤柚乃さんが所属していると思うのですが……」
『どちら様でしょうか?』
確かに、名乗らなければ繋いではもらえないが、俺の名前を出すわけにもいかない。
迷った挙句、申し訳ないと思いながら七海の苗字を借りる事にした。
「あ……黒澤さんの友人で桐山と申します。彼女のスマホに何度連絡しても繋がらなくて。家に行っても反応がないので、心配で……」
『申し訳ございません。黒澤は一身上の都合で昨日、退職しました』
一身上の都合で退職……?
予想もしていなかった返答に、俺は言葉を詰まらせる。
挨拶もそこそこに、電話を切って俺は膝から崩れ落ちた。
「柚乃ちゃん……もう二度と会えないのか?」
復讐なんて間違っていた。
そんな事をしても、七海は戻ってこないし、誰も幸せになんかなれない。
柚乃ちゃんへの愛情は確かに最初は全部嘘だった。
でも、向き合ううちに俺の方が柚乃ちゃんの事を、誰にも渡したくないくらいに好きになってしまっていた。
幼馴染を救えなかっただけじゃなく、その幼馴染のために心を痛めていた大事な人まで俺は追い込んで更に傷つけて、失くした……。
幸せはすぐそばにあったのに、何の予告もなく、崩れるようにして終わりを迎えた。