嫉妬で苦しむ七海は、俺を柚乃ちゃんに押し付けようとしていたと。

思わずフッと笑ってしまった。

メモを閉じて、今度はメモ2を開いてみた。


七海へ

私はあなたの親友であった事を、嬉しく思う。

だけど今では悲しみしかない。

こんな選択肢しかなかったのか、七海がいなくなって何か月もたつのに未だに疑問しかない。

私はあなたの事を親友だと思っていた。

それはあなたも同じ気持ちでいると思っていた。

でも、そうじゃなかった。

もし本当に親友だったなら、絶望の中に突き落とされたあなたを救えるほどの存在であったはずだから。

そうなれなかった事は本当に申し訳なく思う、ごめんなさい。

いつかそっちに行って会えたら、直接言わせてね。

でも、もうその時には七海は生まれ変わってるかな。

親友として最後のお願い。

もしまた、私が七海と出会えたら、今度こそ本当の親友になって欲しい。

次に会うまでに、私もあなたを救えるような強い人間になるから。


それと、あなたの幼なじみは優しくて本当に素敵な人でした。

偽りの愛情でも、ちょっとの期間、幸せだったし楽しかったよ。

だけど、これからは自分の幸せのためだけに生きて。



最後の一文は明らかに、俺に宛てたメッセージだった。

柚乃ちゃんが復讐の相手ではないって事は、何度だって思った。

一緒にいて七海を裏切ったようには絶対に見えなかったから。

偽りなんかじゃない、本当に柚乃ちゃんの事……。

俺はタブレットを机の上に置き部屋を飛び出し、おじさんに頭を下げてすぐに柚乃ちゃんのマンションへと向かった。

今すぐ会って言わないと、二度と会えない気がしたから。

車の中で何度電話をかけても、繋がらない。

復讐するために、柚乃ちゃんの事は詳細に調べた。

よく行くカフェとか、ショッピングセンターとか。

趣味とか特技、好きな物嫌いな物まで、どれだけ頭に叩き込んだか。

彼女が推しの俺をどれだけ知ってるかわからないけど、それ以上に俺は柚乃ちゃんの事を知っている。

マンションに着いて、インターホンを鳴らしても出てくる様子はなかった。

彼女が立ち寄りそうな場所を全てあたってみたけれど、見つける事はできなかった。