電話の最中に玄関で音がした事には気付いた。
だけど、新しい仕事についての大事な電話で席を外す事ができなかったから、部屋から出る事もできなくて。
電話を終えて急いで部屋を出ると、柚乃ちゃんの靴は消えていた。
急に何か起きたのかと、驚きながらリビングに向かう。
さっき俺が出したミルクティーは手を付けないまま、グラスの中で氷とミルクティーが分離をしている。
推しが作ったミルクティーがもったいなくて本当に飲まなかったのかとクスッと笑ってしまった。
グルッとリビングを見回してみたけれど、彼女の荷物がないから、ここに戻るつもりはないという事。
一体、急に何……?
ふと見ると、リビングの隣の部屋の扉が開いている。
俺が電話に出た時は、ここが閉まっていたはずなのに……。
「……ああ、見たのか、これ」
部屋に入り、コルクボードを見つめて呟いた。
七海が命を絶ったと連絡を受けた後に、七海からメッセージが届いている事に気が付いた。
その日は遅くまで仕事をしていたために、七海の悲痛なメッセージに気付けなかった。
もし早くに俺が気付いていれば、七海は死ななくても良かったかもしれないのに。
そう、何度自分を責めたかわからない。
婚約者と親友が裏切っていたとあったが、婚約者はまだしも、親友が誰なのか俺には全くわからなかった。
七海の部屋からは遺書なんて見つからなかったし、おじさんもおばさんもなぜ娘が命を絶ったのかわからずに悲しみに暮れる毎日だったし。
そればかりか、七海に婚約者がいた事すら知らなかった。
だから婚約者を締めあげれば簡単だっただろうが、生憎、七海の葬式は出られなかった。
葬儀は身内だけで行なわれ、参列したのは七海の上司である編集長と親友と名乗る女の二名だけ。
俺はツアー中だったし、おじさんもおばさんも必要以上の事は教えてくれなかった。
俺は一般人ではなく、芸能人。
怒りに任せて何をしでかすかはわからないと、おじさんからもおばさんからも言われ、我慢するしかなかった。
月命日に七海の親友が来てくれるという事だったから、その日はスケジュールを空けて、七海の実家に行った。
そして接触できたのが彼女……黒澤柚乃だった。
七海にとって、たった一人の親友。
親戚でもないのにこんなに頻繁に七海の実家に来ているのは、親友を死に追いやった罪悪感からだろう。
そんなことしたって七海は戻ってこない。
反吐が出そうになるほどの嫌悪感に包まれた。
七海が味わった絶望感をこの女にも味あわせてやろうと思いついた。
だけど、新しい仕事についての大事な電話で席を外す事ができなかったから、部屋から出る事もできなくて。
電話を終えて急いで部屋を出ると、柚乃ちゃんの靴は消えていた。
急に何か起きたのかと、驚きながらリビングに向かう。
さっき俺が出したミルクティーは手を付けないまま、グラスの中で氷とミルクティーが分離をしている。
推しが作ったミルクティーがもったいなくて本当に飲まなかったのかとクスッと笑ってしまった。
グルッとリビングを見回してみたけれど、彼女の荷物がないから、ここに戻るつもりはないという事。
一体、急に何……?
ふと見ると、リビングの隣の部屋の扉が開いている。
俺が電話に出た時は、ここが閉まっていたはずなのに……。
「……ああ、見たのか、これ」
部屋に入り、コルクボードを見つめて呟いた。
七海が命を絶ったと連絡を受けた後に、七海からメッセージが届いている事に気が付いた。
その日は遅くまで仕事をしていたために、七海の悲痛なメッセージに気付けなかった。
もし早くに俺が気付いていれば、七海は死ななくても良かったかもしれないのに。
そう、何度自分を責めたかわからない。
婚約者と親友が裏切っていたとあったが、婚約者はまだしも、親友が誰なのか俺には全くわからなかった。
七海の部屋からは遺書なんて見つからなかったし、おじさんもおばさんもなぜ娘が命を絶ったのかわからずに悲しみに暮れる毎日だったし。
そればかりか、七海に婚約者がいた事すら知らなかった。
だから婚約者を締めあげれば簡単だっただろうが、生憎、七海の葬式は出られなかった。
葬儀は身内だけで行なわれ、参列したのは七海の上司である編集長と親友と名乗る女の二名だけ。
俺はツアー中だったし、おじさんもおばさんも必要以上の事は教えてくれなかった。
俺は一般人ではなく、芸能人。
怒りに任せて何をしでかすかはわからないと、おじさんからもおばさんからも言われ、我慢するしかなかった。
月命日に七海の親友が来てくれるという事だったから、その日はスケジュールを空けて、七海の実家に行った。
そして接触できたのが彼女……黒澤柚乃だった。
七海にとって、たった一人の親友。
親戚でもないのにこんなに頻繁に七海の実家に来ているのは、親友を死に追いやった罪悪感からだろう。
そんなことしたって七海は戻ってこない。
反吐が出そうになるほどの嫌悪感に包まれた。
七海が味わった絶望感をこの女にも味あわせてやろうと思いついた。