バックの中でスマホが鳴り響いている。

画面を見ると、燈真君からの物だった。

私はそっとスマホの電源を落とす。

嘘ばっかりついて、本当にごめんね、燈真君……。


途中、開いていた花屋で花を買って、たどり着いた場所は彼女が眠るお墓。

何度来ても慣れないこの空気に、深いため息をつきながら、七海の墓前に立つ。

持って来た花束をお供えし、いつものように線香に火をつけた。

すべてを終えたから、これが最後の対面となる。

もう前のように親友面してここには来られないし、今までと同じように生活する事なんてできない。

会社をやめて部屋を引き払って、地元に帰ろうと思う。

きっと忘れるなんてできないし、もちろん忘れるつもりなんてないけれど。


「……最後に会いに来た。できる事なら、時間を巻き戻したいよ。結婚式でブーケをくれるって言ってたあの時間に。そうすれば、私も七海も今頃笑って過ごせる未来を選択したよ?何もあんな奴らのために、これからもっともっとたくさん楽しい事がある人生を終わらせる事なんてなかったのに。あなたがこの世から消えて、誰も幸せになんかなれないよ……」


墓石にすがりついて私は声を上げて泣いた。

土砂降りの雨の中、濡れる事すら気にせずに。

どんなに嘆いても、もうあの時間までは巻き戻せない。

無かった事にはできない……。

願わくば、来世では、七海が世界一の幸せ者でありますように。

欲を出すのであれば、燈真君と七海が一緒に笑っていられるように……。

それが、親友であった私からの願い。


幸せの終わりがない……ハッピーエンドのない世界で。