不動が更に迫った時、僕は自分でも予期せぬ行動に出ていた。僕は不動の前に立ち彼の目を睨みつけていた。不思議と恐怖は感じなかった。
「なんだ、山崎、とっくに自殺でもしたかと思ったからこいつを用意してやったのに、怖くて死にそこなったか」
 不動が睨み返した。しかし、僕は怯まなかった。
「こいつは、ありがたく頂戴しておくよ」
 僕は不動の手から色紙を取り上げた。
「証拠物件にもなるしね」
「なんだと」
 不動の顔が歪んだ。
「男の僕ならともかく、女の子にまでこんなことをして、みっともないと思わないのか?」
「てめえ、喧嘩売るつもりか?」
 不動の頬が紅潮した。
「まさか、君と喧嘩して勝てるなんて思ってないよ。僕はずっと我慢してきたけど、もう我慢するのは止めることにしたんだ。こんなことは今日限り止めてくれないかな?そうすれば、今日までのことは水に流すよ。でも、続けるならば、君は将来を棒に振ることになるよ。僕の父は教育委員会に勤めていて、うちの副校長とはクラスメートだ。もし、こんなことを続けるならば君はこの学校にいられなくなるよ」
 僕の言葉を受けて不動の怒りが頂点に達した。