「大丈夫?」
奈々さんが、倒れたままの僕に手を差し出した。その手を取って僕は立ち上がった。
「すみません。奈々さんを助けるつもりで、逆に助けられちゃった。なんか、すごくカッコ悪いですよね」
本当に情けないと思った。
「そんなことないよ。あんなゴツイ男に立ち向かったんだから、カッコ良かったよ。弱そうに見えるけど、いざとなると純君は強いんだね。見直したわ」
そう言われても何の慰めにもならなかった。
「奈々さんの方が強いじゃないですか。ゲームに出てくる女性格闘家みたいに見えました」
「私は強くなんかないわよ。うちのオジイ、ああ見えて実は島の実力者なのよ。そのことをちょっと利用しただけよ。『虎の威を借る女狐』なんて思ったんじゃないの、あいつ」
「奈々さん、うまいこと言いますね」
ただの狐ではなく女狐と変えるあたりに奈々さんの教養の高さを感じた。