簡単に言ってくれるなと思った。
「そのメロディーを作るほうが歌詞を書くより難しいと思いますが」
「そうかしら?この歌詞ならスローテンポの切ないメロディーにしかなりようがないでしょう。それをなんとなく沖縄風に歌おうとすれば自然と形になると思うけどな」
「そう簡単にゆくでしょうか?」
 僕にはそうは思えなかった。しかし、奈々さんはやれると信じているようだった。
「まあ、とにかくやってみることね。別に締め切りがあるわけじゃなし。のんびりとやればいいのよ。でも、純君には才能があるから、きっと良い歌になると思うわ」
「ありがとうございます。できあがったら、是非聴いてくださいね」
「うん、そうだね」
 そう言ったものの、奈々さんは僕の歌ができるまでずっと待っているとは言ってくれなかった。

 その後のユンタクも前夜同様に盛り上がり、とても楽しかった。しかし季節外れの暑さのせいか最後のカチャーシーを踊ると微かに汗が滲んだ。
 ユンタクの後は談話スペースに場所を移したが話はつきることがなかった。奈々さんも泡盛を飲みながら話の輪に加わっていた。