のむら荘に戻ると、僕は談話スペースで持ってきたメモ帳を広げた。そして、奈々さんに出された作詞の宿題に取り掛かった。夏のように暑い一日にはあまりにも色々な出来事があり過ぎた。とてもすべてを語ることはできなかった。だから、語るべきことを絞ることから始めた。絞り込みが済みどうにか歌詞を書き始めた頃、夕食の時間になった。

 宿泊客は増えも減りもせず、昨夜と同じ顔ぶれだった。昨夜同様に楽しい夕食の時間が終わると、僕は談話スペースに腰を下ろし、作詞の宿題に再び取り掛かった。
 初めて取り組む作詞という作業は決して簡単ではなかったが、なかなか面白いものだった。紆余曲折を経て、ユンタクが始まる前にどうにか歌詞は完成した。とはいえ、出来上がった詞は自分でも稚拙に思えて、とても奈々さんが合格点をくれるとは思えなかった。
お茶を飲みながらメモ帳とにらめっこをしていると、後ろから奈々さんに声を掛けられた。
「純君、宿題はできたの?」
「ああ、やっぱり奈々さん・・」