道の両側の木々が作り出す濃い影の先に白い砂浜が見えた。浜と防風林を仕切る壁に沿って自転車置き場が設けられていた。僕たちはそこに自転車を止めた。
 コンドイ浜は砂浜が広く、開放感のある浜だった。木陰の近くまで波が寄せてくるカイジ浜とは対照的だった。しかし、海はすっかり潮が引いていて、遥か遠くまで白い水底が顔を出していた。
「奈々さん、海を見に行くって言いましたけど、海なんてほとんど見えないじゃないですか」
 奈々さんの真意を測りかねている僕をからかうように奈々さんは笑みを浮かべた。
「沖の方まで行くのよ。そこから、とても綺麗な海が見えるわ」
「なるほど」
 奈々さんは波打ち際に近づくと、海面の様子を確かめながら左手のカイジ浜の方向へ歩き続けた。僕はただ奈々さんについていくだけだった。

「じゃあ、ここから海に入るわよ」
 しばらくして、奈々さんが宣言した。
「わかりました」
 僕の答えを確認すると奈々さんは海に足を踏み入れた。僕もその後に続いた。気温は夏のようだったが水温の方は冬の海そのものだった。初め低かった水位も徐々に深くなり、僕たちは短パンの裾をまくらなければならなかった。