「はい、やってみます」
 そうは言ったものの、僕は難しい課題を出されたものだと途方に暮れた。そんな風にして、僕は初めて歌を作ることになった。

 昼食を取ってから宿に戻り、談話スペースで一息つくと、奈々さんが次の行動の提案をしてきた。
「じゃあ、次は海を見に行こうね」
「海って、もう見たじゃないですか」
 わざわざ「海」を別の物のように言う奈々さんの言葉が意味することを僕は理解できなかった。
「うん、そうね。でも、これから行くのはとっておきの場所なの。まあ、とにかく、ついてきて」
「分かりました」
 とっておきの場所という言葉に僕の期待が膨らんだ。
「ああ、タオルだけは忘れずに持って行ってね」
「はい」
 僕が準備を済ませ談話スペースで待っていると、奈々さんは先ほどと同じトートバッグを持って現れた。
「じゃあ、行こうか」
 声を掛けられて、僕も小さなリュックを持って後に続いた。

 僕たちは自転車にまたがりコンドイ浜を目指した。夏のような日差しは相変わらずだったが、手足を通り過ぎてゆく風も相変わらず優しかった。しばらくすると、僕たちはコンドイ浜の入り口に到着した。