「純君、もう『安里屋ユンタ』歌えるでしょう」
「歌えます。歌詞は完全には覚えていませんが」
「純君なら、歌える歌は弾けると思うよ。まあ、さすがにスラスラとはいかないとは思うけどね」
 奈々さんの推測はおよそ正しかった。
「まあ、確かにギターなら、メロディーラインぐらいはコピーできますが」
「そうでしょ。三線も基本は同じよ。やってみて」
「わかりました。やってみます」
 僕はどうにかして三線で「安里屋ユンタ」のメロディーラインをコピーしようとした。初め、それはまったく上手くいかなかったが、徐々に指が動き始めた。もちろん、ギターの経験がなければそうはいかなかっただろう。
 たどたどしい僕の演奏に奈々さんはきちんと声を合わせてくれた。それが僕に力をくれた。最後まで決してスラスラと弾けるようにはならなかったが、ある程度は形になった。

「ほら、やっぱり諦めずにやればできるじゃない」
 確かに奈々さんの方が正しかった。ただの三線の弾き方ではなく、何かもっと大切なことを僕は奈々さんに教わったような気がした。
「今日初めて三線を手にした人には見えないわね。後は練習を積むだけね」