それから、奈々さんは三線の弾き方の基本を丁寧に教えてくれた。

「じゃあ、弾いてみて」
 一通り説明が済むと、奈々さんは僕に三線とバチを手渡した。僕はバチを指につけて三線を構えた。
「じゃあ、まずドレミファソラシドレミファから」
 奈々さんの言葉を受けて、僕はたどたどしくそれを繰り返した。奈々さんはアドバイスを交えながら辛抱強くそれに付き合ってくれた。ギターを弾き慣れている僕にとって三線は同じ種類の楽器だったから徐々にコツが掴めてきた。

 しばらくすると、奈々さんは僕の上達振りに感心したように言った。
「うん、やっぱり想った通り。純君には才能があるわ」
「そんなこと、すぐ分かるんですか?」
 僕は半信半疑だったが奈々さんの言葉は確信に満ちていた。
「うん、分かる。昨夜、純君の歌を聴いていて思ったの。これは理屈じゃなくて勘だけどね」
「そういうもんなんですか?」
「そういうものよ」
 僕には自分の才能の有無など分かりようがなかったが、奈々さんは僕の才能を疑っていないようだった。
「じゃあ、試しに『安里屋ユンタ』を弾いてごらん」
「え、楽譜もないのに?」
 僕は少々戸惑った。