そうは言ったものの、奈々さんの顔は少し寂しそうに見えた。なんとなく気まずい雰囲気になったので、僕は立ち上がった。カイジ浜は星の形をした砂粒が取れる所だと思い出し、それを理由にした。
「僕、星の砂を探してきます」
 そう宣言すると、ビーチサンダルを履いて奈々さんの元から離れた。白い砂浜の上にしゃがみこんで、手のひらを砂に押し付けるということを何度かしてみたが、星の砂はいっこうにみつからなかった。
「馬鹿ね、そんなところを探してもないわよ」
 背中から奈々さんの声がした。
「もっと波打ち際の方よ。岩の窪みに砂が溜まっている所があるでしょう。そういう所を探すのよ」
 僕は言われたとおり探してみたが、やはり見つからなかった。星砂の浜というのは実は嘘ではないかと思い始めていた。
「純君、こっちに来てごらん」
 また、背中から声がした。僕は振り向いて奈々さんいる所まで行った。
「純君、手を出してごらん」
 僕は言われた通り左手の手のひらを奈々さんの前に差し出した。すると、奈々さんは僕の手のひらにいくつかの星の形をした砂粒を並べていった。
「ほら、これが星の砂よ」
「本当だ。綺麗ですね」