「では、ユンタクは、ここで八時からですから。今日は私の代わりにオジイがやってくれます。ああ、強制ではありませんが、山崎さんも良かったら参加してくださいね」
「ああ、はい、時間があれば」
僕は何だかよく分からないまま適当な返事をしていた。
 義男さんが厨房に戻った後、僕は理恵子さんに尋ねた。
「あの、ユンタクって何ですか?」
「まあ、おしゃべりの時間ね。お酒も飲めるわよ。三線も聴けるし、歌えるし、最後は少し踊ったりするの。純君も是非参加してね」
「はい、参加させてもらいます」
今度は本気で答えていた。
 そして、僕たちは食堂を出てそれぞれの部屋に戻った。

 夕食の後、僕はシャワーを浴び、八時ちょうどに食堂に着いた。山田さんご夫妻と日野さんは既に来ていて、夕食の時と同じ席に座っていた。四人の間には泡盛や氷が用意されていた。僕が席に着くと理恵子さんは黙って三人分の泡盛を注ぎ始めた。僕には麦茶を注いでくれた。
 そこに厨房の方から、義男さんの父であるオジイと奈々さんが入ってきた。二人は僕の左側、テーブルの端の方に座った。理恵子さんは二人の分の泡盛を注いでグラスを二人の前に並べた。オジイは僕たちの顔をちらりと見てから、ユンタク開始の挨拶をした。
「みなさん、今日も集まってくれてありがとうございます。義男は今日、会合があって出かけておりますので、私と奈々ちゃんでやらせてもらいます。では、みなさんグラスを持って」
 僕たちはそれぞれにグラスを掲げた。
「それでは、今日の出会いに乾杯しましょう。では、乾杯」
「乾杯」
 僕たちも声を揃えた。
「それじゃあ、まずは自己紹介から」
 オジイが司会を始めた。
「ああ、オジイ。それはもう夕食の時に済んでいるんです」
 博孝さんが報告をした。
「そうですか、じゃあ、さっそく歌いましょうかね。日野さん、歌集を取ってくれんかね」
「はい」