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それから一年後。
退院した私は音楽学校の門の前で恵太くんとフランくんの隣に立っていた。
「今日は体育館でスペシャルライブがあります。きてください」
「きてください」
恵太くんとフランくんは二人でチラシを配る。私は二人に言われて見守る係りに任命された。
「ねえ、二村樹が出るって本当?」
学校の子が話しかける。
「本当です。最初は歌わないけど」
「え?」
「最初はこの人が歌うので」
フランくんがじっと私を見た。
「あなたが……?」
「宜しくお願いします」
その子に頭を下げる。
その子は予想と違ってぱっと顔を明るくした。
「楽しみにしてます!」
空は快晴だ。
最後のチラシを配り終えて、私たちは体育館に戻る。
舞台裏では準備はできている。
青山も小絵も樹も、私も。
四人で顔を見合わせて頷き、静かに舞台に上がる。
体育館には大勢の観客がいる。
「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。楽しんでもらえたら幸いです」
打ち合せ通り、体育館の舞台の上で私がボーカルを勤める。樹はピアノ、青山はギター、小絵はサックス。
「頑張れ菜穂」
「うん。みんなで頑張ろう」
私は大きく息を吸い込んだ。
あの日机の上にあった未完成の楽譜の曲を、今日私が担当する。
私は口を開く。
「聞いてください、『君はサボテン』」