服をたくさん買えて(俺のだけど)満足したのか、姉貴は上機嫌で饒舌に喋り続けている。


このまま、行きたいところの存在を忘れてくれればと思い駅に足を向けた。




「もう帰ろ…………うわっ」


「おい、あんたふざけてんの? 忘れた、とは言わせないよ」




その首根っこを掴まれて半分引きずられるような形で姉貴の行きたいところについた。


そこに書いてあったのは……。




「“執事喫茶eternal(エターナル)”?」




扉にかかる札を読み上げると、姉貴は満足げに頷いた。




「そう。なんせ、イケメンの宝庫って話題なのよ」


「……帰る」


「は? おい、ちょっと」


「姉貴の趣味に俺を巻き込むんじゃねぇよ」




誰が好んで執事喫茶になんて入ると思っているのだ。




「強制だから。はい、行くよー」




結局、腕を掴んで引っ張られて入店することになった。




「「おかえりなさいませ、お嬢様」」


「うわ」




店に入ると、多くの声が重なった。


俺は思わずのけぞる。




「え、なに……? なんか男子来たんだけどっ」


「新人キャストかな?」


「イケメンすぎるんだけど!」




俺の登場に店内がざわめき立つ。