「いいよ、服なんて。あるもので足りるし」


「あんたはいいかもしんないけど、連れてかないと怒られるの私だからやめて」




姉貴の声が段々近付いてくる。


次の瞬間には、俺の部屋のドアは勢いよく開け放たれていた。


その勢いに負けて、ドアの蝶番がギシと音を立てた。




「ねえ、せめてノックする意思ぐらい見せたら? あと、ドア壊しかねない勢いで入ってくんな」




部屋の惨状を目にした姉貴は「うえぇ」とヘンな声をあげて顔をしかめた。

俺の発言は無視である。




「まじで、この部屋どうにかなんないの? あんた、なんのために本棚あると思ってるのよ。本棚ほぼ空じゃん」


「そりゃ、本棚から出したもん床においてんだからな」


「当然みたいな顔しないでよ。私が馬鹿みたいじゃん」


「は? 馬鹿じゃん。高校の時なんか万年補習組だったくせに何言ってんの」




今は大学でなんとかやっているが、希望の大学に受かった事自体が奇跡だと言えるほど成績が悪かったのだ。


人の本質はそう変わらないため、姉貴が馬鹿であることは今も昔も変わらない。


すると、姉貴はダンッと床に足を思いきり落とした。