伊澄(いずみ)ー」




とある休日、床一面が漫画で埋め尽くされた部屋の隅のベッドで惰眠を貪っていたとき。


階下から、姉貴の間抜けな声が響いた。




「なに」




出せる最大の声量で答える。




「買い物行くよー。ついてこーい」


「いかねーよ。誰が行くかよ」


「お母さんに頼まれてんのー。あんたの服買いに行くんだよ」




まったくめんどくさい。




俺は、ファッションに関しては自他ともに認める無関心を貫いている。


だって、着る服が変わっただけでその人自身の価値は変わらない。


だが、この家族男女比が2:4

男は俺と父さんのみで、母さんと姉がひとり、双子の妹だ。


そのせいで、ファッションに関してめっぽううるさいのだ(主に母さんが)。




持っている服がスーツ二着と制服、適当なもの数枚の俺をどうやら着飾りたいようで、母さんの着せ替え人形になりつつあるのだ。