だが、建物の壁側に立っていた俺は頭を壁に勢いよくぶつけてうずくまった。




「〜〜っ!」


「え、おい、大丈夫、か……?」


「……だいじょーぶ」




ぶつけたところを押さえながら顔をあげると、吐息がかかるほど近くに鷹司の顔があった。


学習しない俺はまた後ろにのけぞりそうになった。



……が、その頭を鷲崎が引き寄せた。




「ちょっと。またやるつもり?」




呆れたようなもの言いに抗議しようと引き寄せられた頭をあげると、今度は鷹司の顎に思いきりぶつけた。




「〜〜っ!」


「いっ……てぇ」




今度はふたりでうずくまる。



視線がバチリと合うと、無意識に俺の口から笑みがこぼれた。




それを見た鷹司はパチリと驚いたように瞬きをすると、つられたのか笑い出す。




「俺等、馬鹿すぎかよ」


「いや、俺“等”とか一括りにしないでよ。俺は被害者なんだけど」




ひとしきり笑ったあと、立ち上がった俺はまだ座り込んでいる鷹司に手を差し出した。