それにしても、びっくりした。


いつもはおろされている前髪をセンターでわけていた。
そこから覗く瞳はシュッと吊り上がっていて、スッと通った鼻筋に形の良い唇。

白い清潔なシャツの上に黒い燕尾服を美しく着こなしている。


学校とは違う、彼の姿。
あまりにも端正な顔があった。


自分の素の一面を見られたことにも衝撃はあったが、それ以上の衝撃があった。




少しすると、鷹司はバックヤードから戻ってきた。




「ちょっと、外出よう。姉貴、なんかテキトウに頼んどいてよ」


「あいよ」




姉貴の返事を聞くと、俺は鷹司と共に建物を出た。




「あのさ……」

「あの……」




少しの沈黙の後、俺たちの声が重なった。




「先いーよ」




俺が譲ると、鷹司は気まずそうに口を開いた。




「あの、さ……。俺がここでバイトしてたこと、学校の人たちに言わないでくれない?」


「あー、うん。言ってもいいことないし言うつもりない」




予想通りの提案に、俺は用意した答えを口にした。




「なんで、こんなとこでバイトしてんの」


「ここ、兄さんの嫁が経営してる店のひとつで、時々手伝ってる」