「ちっ、姉貴のせいで注目の的じゃねーかよ。マジで最悪。だから家から出たくねぇんだよ」




俺は大きく舌打ちをしながら姉貴と客の女たちを睨みつける。




「ごめんよ、弟。なんも考えてなかった……」


「あ゙? アホなんじゃねえの。……はぁ、もういいよ。姉貴が満足するまで付き合えばいいんだろ」




姉貴の申し訳なさそうな声に、俺は大きくため息をつくと執事が案内した椅子に座った。


革張りの豪華な一人掛けソファに体が沈み込む。




「いや、これいいかも。ふかふか」




予想外な心地よさに俺はボフボフとソファを叩く。




「ふふっ。それは良かったです。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。お嬢様、旦那様。……では」




反応したのは姉貴ではなく、俺たちを案内した執事だった。


その声に聞き覚えがあり、反射的に顔をあげる。


が、彼はもうこちらに背を向けていた。

その背中への既視感。


いつも、この背中越しに黒板を見る。




「……鷹司(たかつかさ)?」