「ちょっと、一言だけ言ってくる」


 「ほんとに、今まで俺の話聞いてた!?ちょ、待てよ!」


 斉藤の制止を振り切り、俺は廊下に出る。そして、一ノ瀬の前に立つ。


 相手の目をしっかりと見て、威圧感を与える。


 ちなみに、一ノ瀬の背は本当に高い。170cmぐらいだろうか。背がクラスで一番と言っていいほど小さい俺にとっては、首をしっかりとあげて、見上げなければいけないくらいだ。だから、威圧感を与えられるかどうか怪しいところはある。


 今更になって、少し足がすくむ。なにやってんだ、俺。こいつに一言言ってやるんだろ。勇気出せ。


 自分を奮い立たせて、今度はしっかりと顔を見据える。


 「なんだ?」


 一ノ瀬が話したこともないクラスメイトに話しかけられたからか、不思議そうな顔をしながら、こちらをみてきた。ぐっ.....絶対負けるもんか。


 すぅ、はぁ。深呼吸をして、気合いをためる。そして俺は一言、放った。




 「俺は、お前が嫌いだ!」




 ドキドキドキ。全身が心臓になったかのように、うるさくて仕方がない。一ノ瀬がすぅっと目を細めた。