今日は一ノ瀬は学校に来てなかった。今日、というか、最近はまったく来ていなかった。


 俺を避けたいのはわかる。だけど、一言だけ。あいつに伝えないと気がすまない。


 走って、走って、走って、走って。


 一回、転んだけど、そんなのはどうでもいい。今は、一ノ瀬に会いに行くんだ。


 あのときの一言を___もう一度だけ伝えるために。






 そして、俺はその後ろ姿を見つけた瞬間、叫んでいた。





 「奏っ!!!!!」





 「律夏.......?」




 驚いたように立ち尽くした一ノ瀬___いや、奏に、俺は口を精一杯に大きく開けて、言い放った。













 「俺は、お前が嫌いだ!!!!だけど、........だけど!好きだ!!」











 時間が、時が、俺達周りだけ止まったようだった。


 奏はぴくりとも、動かなかった。動かずに、だけど、俺の目だけは離さなかった。


 沈黙が___訪れる。


 俺も、何も言わずに、奏だけを見つめていたら。