一ノ瀬はどちらかというとクールで怒ったりしないタイプだけど、さすがにドタキャンまでされたら怒るよなぁ。


 本当に忘れていただけだから、許してほしい。


 そんなことを考えていたら、早速、一ノ瀬を発見。どうやら、あまり学校に来ないと行っていたが、俺と付き合ってから来る回数が格段に上がったようだ。なぜだか知らないが。


 「い、一ノ瀬!」


 生徒が多く行き交う中で、一ノ瀬の名前を大きい声で叫ぶのは憚られたが、距離的に声をはりあげないと呼び止めるのは難しかった。


 ぱっ。一ノ瀬がびっくりしたように俺のほうを振り返った。最初は驚いたような顔をしていたら、すぐに暗い顔に変わった。


 やっぱり、怒っているらしい。そりゃそうだよな.......本当に申し訳ない。


 「りつか___松波。どうかしたのか」


 人前のためか一度、名字に言い直す一ノ瀬。俺に問いかけてくれる声は冷たい。


 俺はなぜか涙が出てきそうだった。一ノ瀬に嫌われたから......なのか?


 そんなことで泣きそうになるなんて、過去の俺じゃ想像できなかった。というか、過去の俺は高校生にもなって、泣くなんて恥ずかしいと思っていたから。でも、今はそんな思いもなしに、泣きそうになっている。