「あつー!」


 三好が叫ぶのもムリはない。


 季節は六月のじめじめとした空気から移り変わり、もう七月。七月は、夏の始まりとはいえ暑い。


 本当に叫ぶほど暑い。俺だって本当は叫び出したいが、めちゃくちゃ我慢している。


 特に、学校の校舎の上の階に行くにつれて、暑くなっていくのがうちの学校の特徴だ。


 だから、一番上の階にある数学の教室なんてたまったもんじゃない。


 それに、数学はもとから授業一眠くなる教科とされているから、集中なんてできるわけがない。


 だからといって、暑くて眠れもしないから、地獄のような時間を俺たちは過ごしていた。


 「なんだよ、まじで数学やりたくねぇ!暑いだけじゃん、こんなの!」


 こうやって、クラスメイトが叫んだり、話したり、眠ったりすることはいつものことなので、数学科の林先生は注意さえしなくなった。


 「それなー、やる意味がねぇよなぁ。だって集中できねぇし」


 いつもはまじめに授業を受けている、斉藤でさえ集中できないようだ。