『じゃあ、俺とソウくんは、これで一つだね!』


 その子は、リツくんは、俺に猫のキーホルダーを握らせると、手を振って去っていった。


 今でも夢に見る。あの子のことを___リツくんのことを。


 俺は見た瞬間にわかったのに。律夏はリツくんだって。


 なのに、『お前のことが嫌い』と一発目に言われ、さすがに驚いた。少しでも覚えてくれていたらいいな、なんて。


 そんな期待をしていたのに。


 悔しくて、悲しくて、俺は言ってしまっていた。お試し付き合いをしよう、と。


 言ってから後悔した。絶対に俺、キモかったよな。だって、男から告白されたのだから。俺は男同士に抵抗はないが、人によっては言われた側は、気持ち悪いと思うかも知れない。


 律夏に嫌われたくなくて、すぐに冗談にして誤魔化そうとしたときに、律夏が頷いてくれたときにはもう有頂天だった。


 「なぁ、奏。もう付き合ってること話したか?」


 ___今もこうして隣にいてくれる。そんな事実が嬉しくて仕方ない。


 「話してない。てか話す人いない」


 「あっ.......悪い。俺、付き合ってる人がいることは話したよ」