オレノイエ、おれのいえ、俺の家。一瞬、思考回路が停止した。


 だって.......付き合っているとはいえ、出会ったばかりの人を家に招き入れようとするか......?普通。


 最近思うが、俺が世間一般から見ておかしいのか、奏がおかしいのかわからなくなるときがある。


 こいつ、天然だし、御曹司だから感覚がずれてんだよな......。たぶん、俺が正しいと思う。


 「いや、迷惑かかるから、無理にとは言わないし、少し気になっただけだし」


 「でも、彼女の願い叶えんのが彼氏の役目だろ?だから、どんな願いでもいい。俺が叶えてやる」


 「っ.......!」


 奏は星が浮かぶ空を見上げた。


 なんで、出会ったばかりのヤツにそこまで、良くしてくれるんだよ。”お試し”の付き合いじゃなくて、”本当に”付き合っていると勘違いしてしまう。


 「.......ありがとな」


 なぜか切なくて、悲しくて、礼を言うだけで精一杯だった。


 「別に。じゃあ、八月。八月になったら、絶対来て」


 俺は少し泣きそうになりながら、頷いた。