「それ、お前がいいところの御曹司だからじゃねぇの?」


 一目置かれすぎて話しかけられなくなっただけだろ。嫌われているわけじゃねぇわ、絶対。


 まさか.......一ノ瀬って天然か?クールさに見合わなすぎだろ........。


 「御曹司ってだけで、話しかけられなくなるのか?そういうもんなのか?」


 あ、こいつ確定で天然だわ。やばいって、さすがに自分が少し一目置かれる存在なのわかってないのは。


 「ま、みんな怖がってるだけじゃねぇの。悪いことしたら、一ノ瀬財閥に目つけられるってさ」


 「怖がってる........」


 俺の言葉に想像以上に傷ついたような顔をする一ノ瀬。だから、急に子犬みたいな感じになるなって.......。


 「別に、一ノ瀬自体が怖いってわけじゃないからな!?全然、そういう意味で言ったんじゃな___わぁっ!?」


 一ノ瀬の膝の上から落ちた___そう思ったときには、俺は教室の床で転がっていて、上には一ノ瀬がいた。


 まるで、こいつが俺を押し倒したみたいな___。そんな状態。


 すると、一ノ瀬は艶っぽい表情でこちらを見ていて。その瞳に吸い込まれそうになるのを俺は感じた。


 きれいな漆黒の瞳。思わず見惚れていると、一ノ瀬は俺の名前を呼んだ。


 「松波。___名前で呼んで?」