「俺?食べてるけど」


 なんだか、そわそわして落ち着かない。少し座り直そうとしたら、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


 「!?な、なんだ?」


 「どこか行くのか.......?」


 なんでいつもはクールなのに、こういうときだけ子犬のような顔をすんだよ、こいつ.......!


 「違う、座り直そうとしただけだ」


 「そうか......?」


 そう言いつつ、俺を抱きしめたまま、離さない一ノ瀬。ますます絵面がひどくなっている気がするのは俺だけだろうか。


 「なぁ......お前って、友達いっぱいいるよな」


 一ノ瀬が急に話しかけてきた。


 ダチ?まあ、いるっちゃいるけど、いっぱいじゃないような......。一ノ瀬のほうがいっぱいいる気がする。勝手な想像だけど。


 ていうか、こいつから”友達”なんて言葉が出てくるのがおもしろい。


 「俺?別にそんないないけど。女子と関わることも少ないし.......。そんなこといったら、一ノ瀬のほうが多いだろ?」


 「いや、俺はダチと呼べる人がいない。なぜか知らないが、入学して一ヶ月もしたら誰も話しかけてこなくなった」