「嫌いって言ってただろ。まさか、もう忘れたのか?」


 「忘れたとしたら、さすがにやばいだろ!」


 思わずツッコんでから、口を手でふさぐ。やべぇ、いつもの調子でツッコんでしまった......!絶対、そういう雰囲気じゃなかったよな、今......。


 「ふはははっ、じゃあなんなんだよ」


 「っ!」


 急に笑顔を見せた一ノ瀬に、なぜか心臓の音が速くなる。こいつ、笑わないなと思ってたら、こんな風に笑うのか......。いきなりは心臓に悪い。


 また、固まってしまった俺に一ノ瀬が不審そうに眉を潜める。


 「さっきからどうしたんだ?体調が悪いか?」


 「いやっ、違う、えっと、これはその」


 「ムリしなくていいんだぞ?」


 「ち、違うっ」