「軽い脳震盪(のうしんとう)を起こしているらしいから、あまり動かない方がいい」


 「......悪い。迷惑かけて」


 急に、謝れば、一ノ瀬は驚いたように俺の顔を見つめる。


 「なんだ、急に。別に俺は運んだだけだ。特になにか()たわけではない」


 「でも、運んでくれただろ。あと、せっかくバレーの試合だったのに」


 「別にいい」


 一ノ瀬がそういうと、しばらく、沈黙が訪れる。午前の話がある手前、少し気まずい。


 沈黙の空間に俺が耐えきれなくなったとき、一ノ瀬のほうから話しかけてきた。


 「午前の言葉、あれどういう意味なんだ?」


 「っ......!?」


 まさか、直球で訪ねられるとは思いもしなかった。予想外の展開に言葉が詰まってしまう。


 というか、なんで俺が気まずくなってんだ......?勇気を出して言ったはずなのに......。


 「えーと、あれは、その......」


 モテたくてお前がムカついた、なんて言えるわけがないっ!さすがに、それは最低すぎだろ、俺......!


 なんて、答えるべきだ、ここは!?