あわてて、試合に集中を戻す。
普通にバレーをしているだけでも、一ノ瀬は女子の視線が集まる。きゃーという悲鳴も聞こえてきた。
一瞬、助っ人をしてくれていいヤツなのかもしれないと思ってしまった自分が恥ずかしい。
そうだ、忘れてはだめだ。こいつは、男の敵だ!
くっ、負けてたまるか!急に敵対心が芽生えた俺は、ボールを捕ろうと必死になるが、背の高い一ノ瀬にほとんどとられてしまって、出る幕がない。
なんなんだ、こいつ......!全部おいしいところをとっていきやがる.....!
また、ボールがこちらに飛んでくる。今度こそ!
足でぐっと踏み込んだ俺は、ボールに向かってぶつかっていった。すると、ずるっという間抜けな音をともに、足が滑った。
やばい!そう思ったときにはもう、ネットの柱が目の前にあった。
ガッ!耳をふさぎたくなるような、イヤなぶつかった音が体育館内に響く。
自分が柱にぶつかった音だとわかるまで、数秒、時間がかかった。あとから、襲ってくる痛みにもう声も出ない。
なんだこれ.......視界がだんだんと白くなっていく。
「松波!」