ニュースの速報が、朝からうるさい。
 一週間前、川に転落事故した身元が割れた様子。相澤裕翔が水死体となって発見されたらしい。
 まさか、間宮の父親が死んだとは驚きだ。
 朝食を済まし、テレビを消して、登校。
 教室につけば、真島が呼んでいる。
「これ見たか?」
 ニュースの記事を俺に見せてくるが、朝のニュースで見たばかり。
「知ってる」
「事故死って、なんで突然」
 解決できなかったことが、こんな都合のいいタイミングで解決してくれるなんて喜ぶべきことだろうか。
 死んでしまっている時点であまりいいことのように思えない。
「間宮もさっきニュースで知ったって連絡きたよ」
「小森は、これで安心かな」
「……小森?」
 真島の表情に察する。小森は俺と病院前で出会ってることを知らないのだ。
「以前、頼まれた。なんとかしてって」
「そっか。だから、間宮のことあれだけ知ってたのか」
「情報が欲しいと思って、間宮を助けるヒントになるから教えて欲しいって、お願いした」
「これで、解決したって言っていいのかな」
 真島は、自分の発言を思い出している様子だった。
『本気で殺してやりたい』
 彼が、本当に殺していなくて安心した。
 もしかしたら、やりかねないと思ったがただの事故だ。
 学校で助けることもできずに自分を責めていたであろう彼が実際に事件を起こしてはやり場のない怒りを覚えてしまう。
「まだ、終わってない。三島の自殺の真相が」
「そうだよな」
「間宮に会えないのか?間宮を脅かす人が一人いなくなったわけだろう?」
「気持ちの整理はついてないと思うけどなぁ」
「……そうだよな。また、今度でも」
「そうだね」
 とはいえ、間宮と会話ができるまでは待つことになるだろう。
 教室の端で台本を開く小森の姿。
 演劇部の裏方をやっていると聞いていたけれど、違うのだろうか。
「あぁ、小森ね。あいつ、今回、主演で劇をやるらしい」
 視線に気づいたのか、真島が教えてくれた。
「あいつが?」
 クラスでは静かで目立たないタイプだというのに、挑戦的だなと思う。
「意外だよな。間宮に見せたいんだってさ」
「へぇ」
 やはり小森は間宮のこと……。
「真島、今日部活?」
「いや、ないけど」
「じゃあ、どっか行かね?」
「いいね」

 それから、また一週間。
 真島は、間宮と一緒に演劇のコンクールを見に行ったらしい。間宮は、まだ体が動かせないため車椅子を使うそうだ。
 本番まで近かったはずなのに、小森は間宮に会いに行っていたと考えると相当練習は頑張っていたのだろう。
 休日で暇な俺は、ふらふらと街を歩いていた。
 他に三島の手がかりを探したいところだが、正直に思い当たるものがない。
 このまま普通の生活に戻るものありだと思う。
 しかし、それが真島にとって許されることだとは思えなかった。
 書店に行き、心理学の本を購入した。
 三島の死の真相にどんな心理があるのかヒントになると考えたからだ。
 近くのカフェにより、読み進める。
 難しいことばかりで飽きてくる。
 せっかく、コーヒーを飲み集中する気になったというのに。